書評・レビュー: 2009年2月アーカイブ

 NHKスペシャル「沸騰都市」が非常に面白かったので、備忘のためにも感想を書いておくことに。

 今回、自分が見たのは15日に放映されたシンガポールと16日に放映された東京だけでしたが、どちらの国家の姿もドキドキさせられるものでした。

 まず、15日に放映されたシンガポールについて。国土も資源もないシンガポールが発展のために選んだ「才能国家」の姿が非常によく描かれていました。バイオや環境などの工学分野を中心に人材育成を進めている反面、低賃金の外国人労働者を調整弁として処遇するという姿が放送では描かれていました。

 その姿は、自分が三ヶ月前出張した際、オンエアでも紹介されたフュージョンポリスの印象やそこでディスカッションを行ったアグレッシブなキャリア官僚野方について感じた印象と同じであり、非常に日本にとって脅威となる国家だと強く意識せざるを得ないものでした。

 一方、16日の東京は、地空にわたる集積を進める「コンパクトシティ」としての姿を描いたもの。前半は現在の東京の街で何が行われて開発についてのドキュメンタリーであり、後半は現実とプロダクションIGによるSFアニメのカットバック方式で構成されていました。

 元々都市計画が好きで、大学時代に都市計画学科への転部を考えたことがある身としては、東京野町におきている変化非常に興味深いものでした。とりわけ、オフィススペースとしての地下の活用についての発想がどれだけ浸透してくるのか個人的には注目していきたくなりました。(もっとも、景色がいいオフィスが個人的には好みなんですけども)

 そして、なにより素晴らしいのはNHKの番組構成力。視聴者に対し、自らの意見を押し付けることなく必要な情報を取捨選択して伝えていると個人的には感じました。これぞ、プロフェッショナルとしての仕事という感じで、内容を離れたところでも一種の心地よさを感じます。(もっとも、民放に比べると予算が違うのかもしれませんが)

 ちなみに、明日、明後日の深夜に再放送があるみたいなので、時間がある方はぜひ見ていただければと思います。

 

第135回の直木賞受賞作が文庫化されていたので、購入、一気に読み終えてしまいました。

 本書は、東京のはずれにあるまほろ市で便利屋を営む多田啓介と、ひょんなことから転がり込んだ高校の同級生の行天の二人が主人公の連作小説です。

 彼らの元に持ち込まれる案件は一見普通の便利屋の仕事、ただし、不思議なことにどの案件もトラブルに巻き込まれていきます。

 読み終わって感じた本書の魅力は2点。

 まずは、人物の「動き」です。主人公の二人はもちろん、各作品のキーマンとして登場する人物の動きがはっきりと感じられます。そのため、自分がその世界の中にひきこまれる感覚を得ることができ、一気に読みたくなってしまいます。

 そして、もう一点の魅力は舞台設定。町田市をモチーフに書かれているまほろ市の都市としての雑多さが、物語としての完成度を高めているように思えます。この舞台設定となっている町田市は、以前紹介した「新・都市論TOKYO」で書かれているのですが、旧来からの都市の結節点とベッドタウンという特徴を持ったこの街は、ある意味で面白い街となっております。

 そして、そんな街だからこそ、便利屋という形での「通訳」の存在が生き、複雑な街で、それぞれ複雑な事情を抱える登場人物の活動をよりリアルなものに感じさせてくれるようと思われます。

 別冊文藝春秋で連載されている続編の単行本化も含め、今後も楽しみなシリーズになる予感がします。

 

 元国鉄総裁の石田禮助氏と元経団連会長の石坂泰三氏について城山三郎が書いた評伝を読んで思ったことを少し。

 若き日にアメリカに向かう船内で出会い、親友同士とあった二人の明治生まれの財界人は不思議なほどの共通点があります。

 それは物事の筋を通す性格であったり、困難と他人がしり込みするような職務を引き受ける気骨であったり、短気な頑固親父でありつつも周囲の人々に好かれる人間性であったりしますが、読んでいてすがすがしさを覚えます。

 合理的でありながらも、社会と企業との関係性を大事にするそのすがすがしさは、日本資本主義の父とも言われる渋沢栄一さんの系譜を受け継いでいるように思われ、ノウハウとは違う知恵の大切さを感じます。

 文句なしにお勧めの書籍でした。

 ちなみに、本の中身から離れ個人的に面白かったのは著者の城山さんがこの二冊の本を上梓する経緯。「もう、君には頼まない」のあとがきにて本人が書かれているのですが、本書を執筆するきっかけが、「粗にして野だが卑ではない」だったということ。本当に偶然ですが、著者と同じ形で二人の人物について知る機会がもてたのは貴重な経験です。

 次は、もう一冊、著者が石坂本を書くきっかけとなった書籍である「ビッグボーイの生涯」についても読んでみたいと思います。(残念ながら、こちらは絶版のようですが・・・)

 

    

 年初に読んだ「白州次郎 占領を背負った男 (上)(下)」のカウンターパートとして読んだ一冊。

本書は、麻生太郎首相の母親である麻生和子さんを中心とした方々が発起人となり生まれた出版物であり、白洲次郎さん本人の語録や各種文献、そして近しかった人々のインタビューを元に構成されています。

 描かれている事実やエピソードとしては、前述の「白州次郎 占領を背負った男」と大きくかわりはありません。ただし、その描かれ方は大きく違っています。

 「語録」を中心とし、それを補うためにインタビューや各種文献を参照するというスタイルが本書では採用されている分、その書き口は淡々としております。そのため、人によっては地味な印象をうけるかもしれません。

 ただ、以前も書いたように個人的には、伝記や評伝に大切なのは「客観的な事実の積み上げ」だと思っておりますので、本書は非常に読みやすい一冊であり、「カントリージャントルマン」として生きたプリンシプルの男の魅力が伝わるおススメの一冊でした。

 ちなみに、カントリージェントルマンという立は、たまたま先日読んだ「祖にして野だが卑ではない」の主人公である石田 禮助氏と重なるところがありました。イギリスとアメリカと場所は違えど、海外生活の長い明治人に共通した何かがそこにはあるのかもしれません。祖にして野だが卑ではないの内容については別途かければと思いますが、いろいろと考えさせられる偶然です。

 

Profile

HN:decchy
大手通信会社でエンジニア・営業経験を積んだ後、IT系ベンチャー企業に転職、 営業・企画・PR等を行うマネージャー業務を担当し、 2008年の東京インタラクティブ・アド・アワードに入賞する等の実績を残す。
現在はプライベートエクイティに転職し、投資業務並びに経営支援、新規事業開発支援業務に従事中。

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