書評・レビュー: 2008年1月アーカイブ

 先日のDocomoとGoogleの提携によって期になっていることがあります。それは公式サイトのビジネス規模がどのようになるか。単純に考えると、公式サイトの淘汰が始まり、各ジャンルごとに上位数社に集約されていくと思っています。インターネットの世界と違いロングテール化はせず、一極集中になっていくというのは少し皮肉な話だなあと思いますが。むしろ、そういった点ではGoogleというよりはAmazon的なEコマース市場の集中かもしれませんが。

 それでは、公式サイトをメインに行っている企業はどのようにすればいいのかということを少し考えました。単純にサイトのM&Aによる資源の集中やSEO対策というものもあると思いますが、個人的には、(1)携帯電話のハードウェアの機能を生かす(2)ユーザの手元にあるという特徴を生かすということが肝だと思っております。

 この点に関しては、「モバゲータウンがすごい理由」の著者、石野さんが書いている「勝手サイト」の本が参考になると思っています。

 本書では、「モバゲー」や「ゴルゴンゾーラ」におけるコラボレーションキャンペーンに加え、「顔ちぇき!」や「おてつだいネットワークス」のカメラやGPSを生かしたビジネスが取り上げられております。(顔ちぇきに関しては前者のコラボレーションでも取り上げられております)

 個人的には、「はなワザ」においては、意識的にコラボレーション企画を立ち上げたりはしていたのですが、ハードウェアの特徴を意識的に使っているわけではなかったので、この部分で考えさせられる所がありました。

 おさいふケータイの特徴を生かした「ぐるなびタッチ」もそうですが、今後は上手くケータイのハードウェアを使って新しいサービスを生み出していくのが、この1・2年のモバイルのトレンドになるのではないかと思いました。

 もっとも、今回の提携(やフィルタリングサービス)と同様、携帯電話のキャリアの移行に左右されてしまいそうなのがビジネスとしての難点ではありそうですが…それでも注目には値すると思っております。

 ちなみに本書はその他、動画に関するトレンドものっており、ポストYoutubeでどうなるかわかりませんが、それまでの前提知識として読んでおいて損はないと思っております。

 昨年11月に文庫化された元JPモルガン東京支店長にして「伝説のトレーダー」である藤巻健史さんのデビュー作。モルガン時代に金融業界で密かな人気を誇っていたFAX通信「プロパガンダ」の付録が第一章、素人でもわかりやすい金融用語解説が第二章、そして、フジマキ流のマーケットの見方が第三章に収められています。

 正直、タイトルと内容は関係がありません。外資系企業に就職を希望している大学生が就職対策で本書を買ったら、当初はすかしをくらうこと間違いなしの内容です。

 ただ、読みすすめるとユーモアにあふれた文章の数々(秘書であるウスイさんの豪傑エピソードが個人的にはツボ)と、わかりやすい金融の説明に引き込まされます。

 その中でも、やはり経験主義や身近な情報に基づいた洞察、分析が一番面白いです。藤巻兄弟本の「フジマキに聞け」にもありましたが、本書でもP380-P381で書かれている他のアナリストが予想した「地価の底入れ説」を疑ったエピソード(*)等において経験に基づいた洞察が発揮されております。

*他のアナリストが名目賃料を元に発表したのに対し、独自の情報で実質賃料をしっていたので、情報に惑わされずにすんだという話

 金融の勉強を始めようかと思う人にも、肩のこらないエッセイを読みたいという人にもオススメの一冊です。

 2006年の日本アカデミー賞で最優秀作品賞など4部門を受賞した「フラガール」、そのフラガールの製作の裏側には新しい仕組みである「シネカノン・ファンド第一号」というコンテンツファンドが存在していました。

 本書は、そのコンテンツファンドを立ち上げた著者によるファンド組成の裏側や映画ビジネスの構造、今後の映画並びに映画ファンドがどのようになっていくかについて、書かれております。

 個人的に関心を持ったのは、「シネカノン・ファンド第一号」の特徴。2004年12月の改正信託業法により可能になった「著作権信託」という仕組みを用いたファンドであはありますが、

  • 45億を20作品にわけて投資することでリスクを分散する
  • 作品の未完成に終わる「完成リスク」を回避する
  • 著作権について倒産隔離が具備されている

 といった特徴を持たせることで安心できる仕組みにしているということ。

 これにより「水モノ」と思われがちなコンテンツへの投資のリスクを減らすことを可能にしております。

 また、最終章で述べている映画ビジネスを含めたエンタテインメントビジネスと金融ビジネスの融合の必要性について述べております。シネカノンファンドはもちろん、過去、コンテンツに絡んだファンドを立ち上げてきた「通訳」である著者が言う言葉だからこそ、説得力があります。

 その一方、思ったのは、仕組みも大事だけれども、安定したリターンを生めるようになるには、エンタテインメントのビジネスとの関係構築が何よりも大事だということ。今回のシネカノンファンドの場合は「シネカノン」とパートナーが「目利き」「製作」「配給」といったポイントにおいて存在していることが、一番のKSFだと感じられたわけですが、(実際、著者も近い内容について言及しております)いかにして関係を築き上げるか、間違いなく、ここが肝となるでしょう。

 そういえば、最近、あまりシネカノン系の映画館に見に行ってなかったのですが(最後に見たのはフィッシュマンズの映画のはず)、久しぶりに見に行きたくなりました。

 もっとも、その前にフラガールを見なければいけないと思いますが…こちらは来週末にでもTSUTAYAにいこうかなあと思います。

 アキバ経済新聞の記事を中心に、3つの視点から書かれている書籍です。

  • 萌えるアキバ ・・・「フィギュア」や「音楽」を中心としたアキバカルチャーについて
  • 遊園地化するアキバ・・・「観光地」としてのアキバの存在について
  • 巨大化するアキバ・・・再編される家電小売業とアキバの状況並びに、アキバの都市計画

 といった形で、この数年にかけアキバに何が起きているのかといったことについて述べられております。

 地域ニュースを発信する「みんなの経済新聞ネットワーク」だけあって、紹介されている事例は実に具体的。ニュースの特集コーナーで報道されるよりも内容は詳しく、それこそ、メイド喫茶の店舗ごとの特徴や、「エアーマンが倒せない」についてまでかかれております。今、秋葉原で何が起きているのかについてはかなり理解でき、久しぶりにアキバに行ってみないとなあと思わされます。(東京の西側に住んでいるとなかなか足を運ぶ機会がないのですが。)

 そう思わされる反面、残念な点が2点。「年表の形でのまとめがないこと」と、「記事に掲載されている店舗の地図情報がないこと」。地域との密着を打ち出ているアキバ経済新聞だからこそ、もっと詳細に「アキバで何があったのか」「アキバで何があるのか」についてまとめ上げて欲しかった気がします。それこそ、観光マップのような形で。

 もっとも、雑多さや不自由さを含め、自分なりにアキバを楽しめばいいのかもしれませんが。

 本日続けての書評は、前のエントリーでも述べた「金融リテラシーの必要性」についての本

 2008年1月現在、Amazonでベストセラーになっている勝間和代さんの書籍。ほぼ二年前に受けた研修の中で、当時JPモルガンのアナリストだった勝間さんが講演に来たことがあます。(ちょうど「インディでいこう!」を出版された頃 *1)

 なんかオーラがあって、パワフルで早口な人だなあ(*2)と思い、当時からRSSリーダーでBlogは読んでいたのですが、気がついたらベストセラーを世に生み出しまくるようになっていました。

 正直、書店にて本のタイトルだけ見た時は「さおだけ屋はなぜつぶれないのか」の流れ以降よくあるタイトルで、敬遠してしまっていたのですが(こういったタイトルは賛否両論だなあと個人的には思います。買う人が多いのだと思いますが、個人的には安直な印象がしてしまいます。)、様々なブログにて好意的な書評が多かったため、購入しました。

 内容としては、大きく3つにわけられます。

  • 今後の社会において金融リテラシーをもつことの必要性
  • 金融商品別の特徴
  • 実践的な分散投資方法

 その中でも従来の日本人の資産形成方法についての問題点を指摘しつつ、敬遠されがちな投資信託を活用するのが、まずはいいのではというように述べられています。。

 各章の内容は、非常に読みやすいです。その理由としては

  • 論理的でありながら平易な文章で書かれている。
  • 具体的な数字を交えて書かれている
  • 原則やポイントを3つや5つといった形で箇条書きで示していること。 

 といったことが挙げられますが、「自分の得意とすることを誰もがわかる文章で述べている」という点で、教科書として本当に素晴らしいです。

 自分なりに試行錯誤しつつ運用をやっている身(*3)からするとそこまで目新しい内容は書かれていないというのが正直な所ではありますが、誰もがもつべき内容が書かれております。

「投資は怖いからしない。だから、「貯金」と「保険」と・・・将来は家かマンションを購入したいなあ」と漠然と考えているような方に対して間違いなくオススメできる一冊です。

*1 「イノベーションのジレンマ」を紹介されていたのを覚えてます。個人的には事前質問項目で「MNPが固定通信にもたらす影響について」と書きました。(限定的だが、ネガティブであるのは間違いないというような回答だったと記憶してます。)

*2 「プロフェッショナル仕事の流儀」にでていたDeNAの南場社長の話し方を見て、似ていると感じました。「マッキンゼーに所属する女性の話し方は似てくるのかなあ」とすごい漠然とした分類をした記憶があります。

*3 「海外の投資信託を中心とした分散投資をする。」「投資信託にあたっては、手数料が少なくなるような工夫をする。」「個別株は基本的にやらない。」「生命保険は必要性がないので入らない。」「レバレッジを利かせる形の投資は自分が許容できるリスクを超えているので、やらない。」など、自分なりのルールを少しずつ考えて運用をしているつもりです。

 

 サブプライム問題についてニュースなどを見てなんとなくは知っていたけれども、もう少し基本的な知識を得ようと思って購入した一冊です。

 「一般の住宅ローンの借り手として対象外(低所得、破産暦など)向けのローンで、信用度が低い分、利率が高い。また、始めの数年は利率が安く、途中から利率が高くなるようなローン」というニュース番組で説明される表面部分だけで理解していてはいけなかった、ということもさることながら、金融全般についてのリテラシーの必要性を考える必要性を改めて感じさせられました。

 本書において著者はサブプライム問題の原因を以下の4つに大きく分類しており、各事象についての詳細説明と、相関関係について、具体的な数字や事例を交えながら説明することで、問題点を分析しております。

  • 略奪的貸付
  • 住宅バブル
  • 金融技術の発展
  • 世界の余剰資金

 また本書で勉強になったのは、この四つの原因は決して独立したものではなく、「風が吹けば桶屋が儲かる」というような密接な関係にあったということ。

 また、その中でもアメリカにおける住宅バブルの崩壊による個人破産者の増加という問題が、住宅ローンの証券化、商品化により、世界的な影響を及ぼしてしまうようになっていることから、高度に金融技術が発展しているということを実感させられます。(著者がP150でいうように、それこそが本質だろうと感じさせられます。)

 そして、思ったのは、個別の事象もさることながら、「金融技術が高度化されるにつれ、世間と業界の金融リテラシーの差が非常に大きくなっている」ということ。個人の住宅ローンといった債権までも証券化されていく形で発展する金融世界、一般消費者は、住宅バブルに踊り、自転車操業的に借り入れを行い、返済が不能になる一般消費者という構図を見ると、汗をかいて稼ぐお金の大事さはわかるけれども、金融についての知識とポリシーをもたなければ生きていけない時代になるのは不可避だと思わされます。

 

 

 ネットライフ企画の岩瀬さんのブログで紹介されており、購入した一冊。元日本生命の営業マンで、現在は十数社の保険商品を扱うメディカル保険サービスの取締役である著者により、生命保険会社の実態、生命保険の「仕組」と、並びに、プロの保険の加入の仕方等が具体的な事例を元に書かれている。実際、二ヶ月ほど前に本書に書かれている会社の営業トークを聞いたこともあったので、より身近な内容として読むことができた。(本書で紹介されている内容とほとんど同じだったので、読んでいて感心させられた)

 106歳まで生きる前提である「終身保険」、薄い生涯保証金額である「定期特約付き終身保険」、外資系保険会社が従来の保険をやめさせるためのセールストークに使う「更新」と「掛け捨て」の話や代替として提案する「終身保険」の話などは非常に具体的で面白い。

 また、知識不足による混乱から保険の「ミス」契約が発生するという立場の下、保険の種類をわかりやすく分類されていて非常に有用。

 保険の種類は大きく分けると「定期保険」(=『保証にかかるお金』だけをもらう保険)、「定期保険+満期金の保険」(=『保証にかかるお金』+『満期金の積み立てのためのお金)の二種類であり、現在販売されている「定期保険」「養老保険」「終身保険」のうち、前者と、後者2つで分類されるというのが、その分類だけれども、実際に保険を検討する際にこれをしっているだけでも大分、知識の整理ができる印象を受けた。

 さらに有用なのが、保険の選び方。「保険に何を期待するか」ということを考え、万が一の場合の「優先順序」をつける(例えば、「子供が幼い時期に自分が障害をもっても生活に最低限の保証があるようにしたい」、ということ)というのが基本的な考え方だけれども、その中であった、33歳の既婚、二人の子持ちの「乗り合い保険代理店」の営業マンの具体例が非常にわかりやすい。

  • (自分が)死んだ時の家族の生活を保障する
  • (自分が)大病、入院になった場合の家族の生活を保障する
  • 費用を極力安く抑える

 という前提(要は「貯蓄が間に合わない順」)の下で、年間にもらえる額が一定であるひまわり生命の「収入保障保険」と、一時金の比率が大きい東京海上日動の「医療保険」(メディカルミニ)にはいっているという例だけれども、必要なものの優先順序がはっきりとしており、非常に勉強になった。

 実際に保険に加入している人も、今後加入する人もどう保険を選択すればいいのか、自分の選択は間違っていないのか考える意味でも非常に有用な本だと感じるとともに、起業段階でこういった本を読んで感想を書いている岩瀬さんのネットライフ企画がどのような商品をどのように売っていくのか、非常に楽しみでたまらない。

 日本最北の動物園、旭山動物園がいかにして「復活」したか、その理由・ノウハウといったものから、成功するための組織論、人と動物園の関係といったものが書かれている一冊です。自分自身、昨年の10月に初めて旭山動物園を訪れ、純粋に楽しかったことから関心を持ち、購入した本ですが、実際に自分が目で見てきて、体験してきたことだけに、説得力をもって受け入れられました。

 旭山動物園では、危機を脱出するため「動物園とは何か?」ということを考えることからはじめました。その中で4つの役割があるということを意識付け、その役割に基づいて何をするべきかを考えさせることから始めます。

  • レクレーションの場
  • 教育の場
  • 自然保護の場
  • 調査・研究の場

 といった役割を基本スタンスとして認識した上で、次に動物園のメンバーは「何をしなければいけないのか」「動物達を通して何を見せ、何を訴えるべきか」「動物たちになにをするべきか」といったことを考えます。

 その結果として、飼育員達が自分達の言葉で説明する「ワンポイントガイド」が始まり、その後、「もぐもぐタイム」「手書きポップ」へとつながっていきます。

 と同時に、レクレーションを充実させるだけでなく、学術的な専門知識を磨き、基づき、動物達が過ごしやすい環境を作り出そうとします。結果として「ペンギンの散歩」やアザラシの「マリンウェイ」とった工夫につながる環境作りに成功します。(学術的、専門的な分野において、旭山動物園は数多くの日本産動物の繁殖に成功する等の実績を残しているそうです。)

 具体的な工夫については実際に体験することが一番ですが、1つ1つの工夫に意味があったのだと思うと、一段と面白く感じられます。

 そして、1996年には年間29万人にまで落ち込み廃園の危機にあった動物園は、2006年度には年間で300万人が入場者するまでに復活、そして発展を遂げます。

 「珍しい動物の不在」「厳しい地理条件(気候、場所)」「予算が少ない」といった悪条件の中、アイデアと意識の改革、努力といったソフトパワーで成功を成し遂げたことは敬意を示さずにはいられません。

 改革としての組織論としても、旭山動物園に遊びにいく前の事前準備としても本当に面白い一冊。必読です。

 大学のゼミ(といっても、研究室といったものではなく、半年間少人数制で行う講義)で習って以降心がけていることに「興味を持った出来事について違う立場から書かれた複数の本を読み比べる」というものがあります。

 例えば、連合赤軍の書籍に関して言えば、

を比較してみると、それぞれの当事者がそれぞれの立場でどのように行動していたのかがわかります。(他の赤軍メンバーのノートや、長野県警側の著書をさらに読み比べてみることも可能です)

 そういった中、最近、佐藤優さんの本を多く読んでいるので、同様に、鈴木宗男関連事件の主役の立場から書かれた本書を読んでみようと思ったわけです。(ただし、解説は佐藤優さん)

 内容としては、大きく分けて3つに分けられます。

  • 外務省、政治家、検察などの闇の部分についての(具体名を交えた)指摘
  • 総合的な「国益」のために闇を黙認、活用していたことに対する反省
  • 今後の政治家としての鈴木宗男のあり方

 読んでの感想は、政治家と官僚では見えている世界に違いはあれど、鈴木宗男-佐藤優ラインで考えていることは「国益」という点で一致していたであろうということ。国益を求めるという「軸」がぶれていないのは、読んでいて心地いいです。(もちろん、本書の1つの意図として広く自分の主張を聞いてもらい、過去の悪評を打ち払いたいという「政治家的意図」があるだろうことは否定しませんが)

 そして、もう一点思ったのは、検察官の立場からの著書が読みたいということ。本書では、「国家の罠」と同様、取調べを行う検察官(別人物を思われる)が、本件について「国策捜査」「逮捕した件では通常ならば立件できない」ということを素直に認めていること。佐藤さんの著書の影響を受けたのかもしれないけれども、この点に関しては将来的に検察官の立場からどうだったのかが明らかになると(無理だと思いますが)非常に興味深いものになると感じられました。

 現役医師の手による医学ミステリーであり、デビュー作にして第四回「このミステリーがすごい!」大賞作品。ずっと気になっていたのですが、今回文庫化されたこともあったので購入、早速上下巻ともに読み終えました。

 感想は「本当に面白い!」の一言。

 以下、簡単にあらすじを。

 成功率が6割程度とリスクとの高い拡張型心筋症の「バチスタ手術」、そのバチスタ手術を過去連続で15度以上成功させ、活躍が新聞でもとりあげられた東城大学付属病院の「チームバチスタ」において、3度連続で「失敗」が起きます。そして、その原因について「窓際」医師の田口が院長の高階に内密で調査するよう依頼されるところから物語は始まります。

 依頼を断れない田口は、「チームバチスタ」のメンバーに聞き取りを行った上で、一枚岩と思われていたチームバチスタのもろさを知ります。そして、実際に手術に立ち会います。マスコミの注目も受けたアフリカのゲリラの少年に対する手術は何とか成功しますが、その後に行われた手術は再度「失敗」し、患者は術中死を遂げます。しかし、田口は原因を突き止めることはできません。

 田口から原因が分からないと報告を受けた高階は、ある切り札を差配します。厚生省にいる白鳥がそのメンバーです。「変人官僚」である白鳥は、田口の努力を認めつつ、田口とは違った手法を用い、再度聞き取り調査を行っていきます。常軌を逸した行動により周囲を敵に回していきながらも白鳥は田口には見えなかった世界をあぶりだしていきます。そして、物語はクライマックスへと向かっていくこととなります・・・。

 ストーリ展開の秀逸さもさることながら、登場人物のキャラクターが素晴らしいです。チームバチスタのリーダー桐生や厚生省の白鳥といったメンバーはもちろん、脇を固めるチームバチスタのメンバーや大学病院の幹部達、田口の所属する不定愁訴外来のベテラン看護士藤原等、一人一人特徴的、かつユーモアのある形で描かれています。

 さらに、現役医師ならではのリアリティーのある医療現場の描写もいいです。特に、大学病院という難しい組織や実際の医療現場で抱えているだろう問題の描写が優れており、物語に奥行きを与えてくれています。

 ちなみに、テイストとしては、「空中ブランコ」に代表される伊良部医師シリーズに似ており、奥田英朗が好きな人ならば、まず間違いなく楽しめるかと思います。

 ちなみに、来月には映画が公開されるので、こちらも是非見たいと思います。(サイトでキャストを確認したら、白鳥を演じるのが阿部寛(=テレビの「空中ブランコ」の伊良部医師)で「まさに!」という印象を受けたので、楽しみです。)

 何度も本屋で手をとりながら「買うべきか、買わざるべきか」と悩み続けた一冊でしたが、この年末年始で一通り本を読み終わってしまっていたこともあり、とうとう購入しました。

 本書を読むまでは、麒麟の田村がどれ位長い間ホームレス生活を送ったいたのか等イメージがつかなかったのですが、実際に本を読むと「あっ、そういうことだったのね」と知ることができます。(以下、少しだけネタバレが入りますので、まだ読んでいない方で、読む予定のある方は見ない方がいいです。)

 結果から言いますと、面白かったです、読後感も素晴らしい。

 中学校2年の一学期の終業式当日に父親の手によって「解散宣言」がなされ、夏休み突入と共に田村少年は「まきふん公園」でのホームレス生活に突入します。別の場所でホームレスをしていた兄がアルバイトするコンビニで食事をもらったり、自動販売機の下の小銭を探したりする生活を送りつつ、約一ヶ月間ホームレス生活を送った後、少年は同級生の家で生活させてもらうようにとなります。

 その後、同級生の親をはじめとする暖かい大人たちの支援により、少年は兄、姉と三人で一つ屋根の下で暮らせるようになり、田村少年が高校、そしてNSCを卒業するまでの間のエピソードが続いていきます。

 本書を読んで思わされたのは、周囲の人たちの暖かさはもちろん、田村さん本人の実直さです。小学校5年の頃になくなられた母親に対する思いや、恩人であった西村のおばちゃんの死と母親の死を重ね生きる意味を喪失してしまったこと、考えを変えるきっかけとなった工藤先生の手紙のエピソードなどがストレートに書かれており、その「さらけだす」勇気はすごいと思わされました。(実際は上手くぼかしているのかもしれませんが…)

 ただ、感動的なエピソードの反面、笑いを生むエピソードも多く収められており、感動だけに収まらせないのも個人的には好印象です。ホームレス時代の「ウンコの神様」や高校時代の「奇跡の発見」等は思わず、声を出して笑いそうになってしまいました。真剣に貧乏なだけに余計面白い。

 一方、心配なのは、今後「笑えない」危険性があること。本書を読んだ多くの人が「いい奴だなあ、頑張れ!」と思ってしまうだろうというのがその理由。10年前の「猿岩石シンドローム」にならなければいいのですが。元々M-1で実績を残しているから心配ないと思いたいですが…さて、どうなることやら。そういう意味でも2008年、注目かもしれません。

   

 2007年12月に発行された佐藤優氏の新刊。内容としては、新潮45に連載された内容を中心とした人物論。

 書き下ろしの「鈴木宗男論」から、外務官僚時代に交流のあった橋本、小渕、森の元総理大臣、そしてラスプーチン、スパイ・ゾルゲ、さらにはイエス=キリストまで、豊富な経験や知識に基づいた分析による人物論を展開している。(前半では自身が関わった政治家について、また、後半では過去の人物について論評されている)

 前半部分の鈴木宗男氏から森元総理に関しての経験談並びに人物評は、文句なしに面白い。(一部は、別の書籍で呼んだことがあるエピソードが出てくるのは仕方のないところではあるけれども)小渕総理のもつインテリジェンスの素養や、自己保身や嫉妬を超え国益の成就を目指した森総理のエピソードなどは、あまり表に出てくる話ではなく、非常に興味深かった。

 一方、後半のイエス=キリスト、ティリッヒ神学とアドルノといったエピソードは、自分にとって馴染みがない議題である上、自分としては専門的過ぎて正直、理解するのが難しく、興味がわかなかった。

 では、本書を読むにおいて、一番面白いのは、他の著作と同じような北方領土関連の出来事なのかというと、必ずしもそうではない。

 むしろ、本書の価値は第十三話の「有末精三のサンドイッチ」にあると思えた。

 終戦直後、米軍との対応窓口になった中将であった有末精三は、天皇制の維持といった最終的な国体護持のためには「米軍に軍票を使わせないこと」が不可欠であると考えた。その上で、有末は、アメリカが脅威に感じる条件である「日本国内におけるゲリラ戦」「ソ連との接近」といった2つのシナリオをイメージさせることにより、米軍との交渉を成立させた。(具体的な種明かしは本書P175-P177にて書かれている。)

 このような一般的に走られていないけれども重要な任務を担った人間のインテリジェンスというのは読んでいて非常に勉強にもなるし、単純に読み物としても面白い。

 自身が巻き込まれた「国策捜査」の前後に関する経験を活字にし伝えていくという点で、既に申し分のない評判を得ている著者だからこそ、今後は自身の経験だけでなく、一般的に知られていない人物やエピソードを拾い出して、独自の視点を加えた上で、伝えていって欲しいと強く感じさせられた。

 

 ポイントが絞られている上、200ページ弱と短く、短時間で読めてしまうので最近気に入っている角川oneテーマ21。年末年始に選んだのは、先日の巨人軍論に引き続き、野村シリーズ(血はつながっていないけれど)プロ野球のエージェント団野村氏による「交渉力」。

 実際、話題になった過去のメジャーリーグ移籍の舞台裏が書かれている点で非常に面白い。

 とりわけ、1994年末から1995年にかけて話題となった野茂英雄の「任意引退」という盲点を突いたドジャースへの移籍については、細かく書かれていて引き込まされる。

 例えば、野茂と団野村がとった戦略は、「複数年契約」が第一優先で、その後が「任意引退によるメジャーリーグ挑戦」という選択肢だったということ、また、「任意引退」を口にするのは球団からにさせたこと、並びに、球団が翻意して複数年契約を提示する可能性を残すために公表までの冷却期間をお互い置こうとしたことといったことが書かれている。

 さらに、交渉に当たっては、日米の野球協約を事前に調べ、「日本での任意引退」が米国でのプロ契約に支障がないことを確認していた内容についても用意周到で、思わずうならされる内容(現在は改訂されている)。

 その他の伊良部やソリアーノについての代理人の例等を非常に面白く、短時間でさっと読めてしまう一冊。

 なお、本書のテーマである交渉力については、第5章で以下の八ヶ条にまとめられている。

  1. 市場を知る
  2. 複数のプランを用意し、ほのめかす
  3. 相手の話を聞き、猶予を与える
  4. 約束したことは必ず書面にする
  5. 口約束は信用するな
  6. 怒るときは冷静に
  7. ネットワークと正しい情報を得るためには自ら動く
  8. 絶対に諦めない

 先日のエントリーの「ハーバード流交渉術」と比較すると、理論と実践で少し違いがありそうな印象をうける反面、情報収集し、選択肢を作る、人の話を聞くといったあたりのことは当然ながら普遍的なものだと実感させられる。といっても、当たり前といえば当たり前のことなんだけども・・・。

 結局、大事なものは普遍的って事なんでしょう。

 「原則立脚型」の考えに基づいて、いかに効率的に交渉を成立させるかについて述べられた本。約20年前に出版され、文庫本で第18版まで重版が行われている交渉術の古典ともいえる本。

 基本的に本書で述べられている内容はシンプル。まず、交渉の基本要素を「人」「利害」「選択肢」「基準」の4つに分解した上で、それぞれについて

  • 人・・・人と問題とを分離しよ
  • 利害・・・立場ではなく利害に焦点を合わせよ
  • 選択肢・・・行動について決定する前に多くの可能性を考え出せ
  • 基準・・・結果はあくまでも客観的基準によるべきことを強調せよ

 という対処法を基本原則として示唆している。

 例えば、2点目の利害という部分に関しては、相手の立場から考えられる基本的ニーズを「安全」「経済的権利」「帰属意識」「認められること」「自分の生き方を自分で決定すること」の5つに位置づけ、相手の立場がどのニーズに基づいたものなのかを考えることが重要といい、その中で具体例として「離婚における扶養料」を例としてあげている。

 その他にも、「相手に問いかける」「相手の言っていることを自分の言葉で置き換えて、理解を伝える」といったポイントや相手が強硬な主張にでた場合の回避策としての「柔道的交渉術」等について書かれており、平易且つ、具体的に書かれているので、翻訳文にしては比較的読みやすい。

 また、第二章では「解決の扉を開く交渉戦術」、第三章では「不利な状況を乗り越える交渉術」といった形でシチュエーションごとに文章が展開されているので、自分が交渉に臨む前に想定されうる状況について考えるのにも役立ちそうな印象を受けた。

 そういった点を含め、正直、「自分なりに実践しているつもり」という内容もある本。けれども、それ以上に、状況に応じどうやろうかというシミュレーションを行ったり、自分自身について気がつかされるという点で非常に有益に思えた。

 ベストセラーを記録し、第59回毎日出版文化賞を受賞した本書は「外務省のラスプーチン」こと佐藤優氏が、外務省でどのような活動をし、鈴木宗男衆議院議員と共に北方領土返還交渉に携わったか、そしていかにして悪役とされ、最終的に「国策捜査」によって逮捕され、第一審で懲役二年半、執行猶予四年の有罪判決を受けるに至ったか(*1)が克明に書かれている。

*1 現在、最高裁判所に上告中

 鈴木宗男関連事件とはどのような背景の下でどのように事件化されたか、また、どのように「国策捜査」が始まり、どのように完結していくのかといったことを知るだけでも有意義だけれども、それ以上にプロフェッショナルとして生きている人間の「ケーススタディ」として読んでも、本当に面白いと感じさせられる。間違いなくオススメできる一冊。

 本書を読んで感じた点は主に3点。箇条書きにすると

  • 佐藤優の持つプロフェッショナリズム
  • マスメディアと中心とした「空気」と、空気が生む「国策捜査」の恐ろしさ
  • 「信頼」とは何か

 といったこと。

 まずは、インテリジェントオフィサーとして、佐藤優氏がいかにプロフェッショナルだったか。こちらに関しては、文章を通じて感じ取れる著者の情報に整理、分析の姿勢から感じられる。「事実関係を克明に記憶し、物事の全体像を把握、その中で状況とプレイヤーの意図について、客観的に分析し、組み立てていく」その姿勢は、まさにプロフェッショナルという凄みを感じさせてくれる。

 また、本書の一つの目玉とも言える東京地検特捜部の西村検事とのやり取りの様子からもそれはうかがい知ることができる。西村検事との取調べにあたり「鈴木宗男関連事件における自己のポジション」「西村検事の持つ価値観、世界観」を取り調べの初期で把握することに努め、その上で「阿吽の呼吸」で供述調書をつくりあげていく「交渉現場」の描写は、お互いの立場を認めた上でのプロ同士でなければなしえないもののように感じられた。

 2点目は、世の中の「空気」と、それに基づく「国策捜査」の恐ろしさ。一人の声の大きい政治家がきっかけで、世論が動き、その世論に動かされ、悪党扱いされ、詳細はともかく、逮捕されるに至った経緯を読むと、それこそ、戦前の言論統制にも似た恐ろしさを感じさせられた。加え、現在の報道にはフォローアップがほとんどなく、一方的に傷つけられたイメージ、名誉の回復がなされない点についても大きな問題点として感じられた。

 最後、「信頼」について。北方領土の返還交渉という場面だけでなく、人間的にお互いを認めていたと思われる鈴木宗男衆議院議員と佐藤優氏に共通する「軸がぶれない誠実さ」を本書では感じることができる。ま(この誠実さは東京地検の西村検事にも感じられる一方、一部の国会議員や外務官僚には残念なが感じることができない。)

 そういった誠実さは組織の中「だけ」で生きていく場合は、必ずしも必要のない資質かもしれないけれども、こういった資質を持つ人間が正しく生きていける世の中であってほしいと、そういった人間でありたいと思わずにいられなかった。

 

 現楽天の野村監督による巨人軍論。監督として一般的に知られている実績もさることながら、個人的に高校時代神宮球場でビール売りのアルバイトをし、ヤクルトの全盛期の時代を生で見て感じていたために、一層の説得力を感じて読める一冊。

 本書では、大きく二部構成にわけられる。

 前半の第2章から第4章では、V9時代の巨人軍の強さを「進取の精神」「人間教育」「軸となる人間の存在」「適材適所の配置」「管理野球」等といった形に分類し、自身の経験を交え分析している。

 また、後半の第5章、第6章では前半を踏まえた上で、「強い組織」の作り方といった組織論及び、伝統を構成する要素は何かといった伝統論について書かれている。

 その中で、個人的に印象に残った内容は、P149-P151で書かれている「優勝するにふさわしい」組織を作るためのポイント。

  • 適材適所と意思統一によるまとまり
  • 知力・体力・気力のバランス
  • 相手の弱点をつく
  • 選手に優越感を植え付ける

 「戦力の集中」のための方策と位置づけられている上記4点は実際に球場でアルバイトしながら野球を見ていた経験や印象からも納得。

 一方、その上で「エースと4番」だけは育てられず、天性の才能が必要というのが面白い。

 つまり、理想的な組織とは、組織的なまとまりとその軸となる人間の存在のバランスが上手く取れている組織ということだと感じた。

 と、同時に就任三年目で組織の熟成がすすみ、エース候補が復活したり育成される可能性が高い今年年の楽天が改めて楽しみに思えた。(昨年の絶対的4番、山崎武志が活躍できるかは不確定要素としてとらえる必要があるけれども…。)

 

 2008年に読み終わった本、第一弾はウルトラ・ダラー。

 NHKワシントン特派員であった著者が書いたインテリジェンス小説。詳細なストーリーは、2002年にアイルランドダブリンで発見された精巧な偽100ドル紙幣「ウルトラダラー」をめぐる謎について、英国BBCの職員であり情報部員であるスティーブンが、日本、米国の情報部員・職員と連携し解き明かしていくというもの。

 情報収集のプロフェッショナルである佐藤優氏が認めるだけあり、情報活動にかかわる部分の記述は非常に精緻。また、偽ドルがただの紙幣偽造ではなく核兵器の資金源として用いられるという内容は、2002年以降の実際の日本外交を予言していたのではと出版当時の2006年から言われており、一気に読みすすめたくなる内容。

 その反面、物語としては雑な部分が存在することも事実。偽札検知に関するエピソードが途中から尻つぼみになってしまったり、巡航ミサイルを押収してからの結末があわただしい上、中途半端なハードボイルド小説のような結末となっており、読み手として一番気になる巡航ミサイルの中身の行方について触れられていないのは残念な所。

 特に、結末に関しては、情報戦を散々繰り広げてきたのにも関わらず、女性を救い出すための銃撃戦を山の中で行うのは安易に思えた。そういった点で、現実の事件についてリアルにかかれている「国家の罠」には及ばないと感じてしまった。

        

Profile

HN:decchy
大手通信会社でエンジニア・営業経験を積んだ後、IT系ベンチャー企業に転職、 営業・企画・PR等を行うマネージャー業務を担当し、 2008年の東京インタラクティブ・アド・アワードに入賞する等の実績を残す。
現在はプライベートエクイティに転職し、投資業務並びに経営支援、新規事業開発支援業務に従事中。

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