2009年6月アーカイブ

 映画「ハゲタカ」を見に行ってきました。

 今回のハゲタカは日本の自動車メーカーを買収しようとする中国系ファンドの「赤いハゲタカ」と日本のハゲタカ「鷲津ファンド」との戦い。

 結論から先に言うと、最終的な鷲津ファンドの逆転劇は面白かったですが(手法としては「トップ・レフト―都銀vs.米国投資銀行」に近い印象)、買収ドラマと言う点ではストーリー展開、リアリティの両面で、テレビドラマ版に比べ、少々物足りなさが残りました。

 相変わらず特に何もしていないのに評価される柴田恭平の立場はいいとして、中盤のTOBの価格吊り上げ合戦のあたりは正直、物語として平坦な印象を受けました。(もっと「寝技」や「直接対立」のような要素があると面白かったかもしれません)

 その一方で思ったのは、今後、日本の企業を買収に来る中国企業やファンドは間違いなく増えるだろうなと言うこと。特に製造業における「生産技術」やメディア業界におけるの「原作提供力」といった分野(これらは日本が得意とし中国が苦手としている分野だと個人的には認識しておりますが)に対して、さまざまな形での資本参画が見られるのではないかと考えております。(それがいいことなのか、悪いことなのかはわかりませんが)

 そういった意味で、今後の世の中を先読みした興味深い映画になっていると思われ、それだけにもうひとつふたつひねりがほしい作品でした。 

 JDC社(ジャパン・デジタル・コンテンツ信託株式会社)ですが、6月19日に三ヶ月の業務停止命令が出ました

 日経新聞にもかなりのスペースを割いてかかれていましたが、プレスリリースを読むと、一番の問題は信託財産の流用(自社の負債返済のため)だったように感じます。顧客財産の流用を行わないということは、ファンドや信託業を営む上で守らなければいけない最低限の義務であるわけですが、ここまで問題が発生しながらも上場を維持しつづけることの意味を考えてしまわざるを得なくなります。

 さらに、以前読んだ「「フラガール」を支えた映画ファンドのスゴい仕組み」で書かれていた内容ではないですが、ここまでくると同社のファンドから出資されたコンテンツについて、別の完成リスクすら覚えるのは考えすぎでしょうか?

 引き続き注目していきたいと思います。

 1Q84を途中に挟んだりしておりましたが、ジウ以来、何冊か誉田哲也さんの作品を読みました。その中で、まずは出世作ともいえるストロベリーナイトについて。

 本作は、姫川玲子シリーズの第一作、警視庁捜査一課の女刑事「姫川玲子」が、周囲の刑事との対立や協力を経てとあるある猟奇的殺人事件を解決するストーリーです。

 個人的に感じた見所は2点、「個性的な刑事たちの主導権争い」と「猟奇的連続殺人事件に関する描写」です。

 前者に関していえば、敵対関係にある刑事や年上・年下の部下等、個性的な面々による丁々発止のやり取りが面白いです。とりわけ、敵対関係にある他の担当の係長である勝俣やなれなれしい所轄の刑事である井岡がいい味を出しており、主人公を生き生きと動かしております。

 また、後者について言えば、残酷シーンの描写が思わず目を背けたくなる程精緻に描かれております。正直、心臓に悪いくらいで、実際に読んでいて「うわっ」っと思わされます。

 そして、両方に共通するポイントが映像イメージが浮かびやすいこと。

 これは解説を書いている有隣堂の名物書店員である梅原さんも指摘していることですは、本作品を読んでいると自然に自分の頭の中で映像が組み立てられる感覚を覚えます。(余談ですが、彼が書いているPOPをまとめた良著「書店ポップ術―グッドセラーはこうして生まれる」では、誉田さんの小説についてのPOPが数多く紹介されています。)

 そういう意味では、別途紹介するつもりの「疾風ガール」と合わせ、ぜひ映像化されてもらいたい一作です。

 

 先日のエントリーでも触れたJDC社が第三者割当増資を発表しました。

第三者割当増資の引き受け先の話などはよくわからないのですが、今回、面白いと思ったのは価格の決定について。

 一般的なルールとして、上場会社において取締役会決議にて行う第三者割当増資の発行価額は、株主保護の観点から直前日の株式の10%ディスカウント以内の価格とされております。一方、今回の増資の発行価額の2,900円は、直前日の41%ディスカウントであり、三ヶ月の終値平均の10%ディスカウントです。

 このことについてJDCの発表では以下のように記されております。


当社は、弁護士より発行価格の決定手続きが適法となる条件について、意見をいただきました。その上で、本増資の発行価格の決定にあたり、価格決定日直前日の市場価格を基準として選択するか、適当な期間の平均市場価格を基準として選択するかの判断は、売買高の状況を勘案した上でなされる発行会社で判断すべきであるとの意見を基にして、社内で討議し、価格基準を当社で判断いたしました。当社としては、当該発行価格は公正な価格であると考えます。また、当社監査役会は、本第三者割当増資の発行価格は、当社の置かれている状況から、割当先の意向を踏まえて決定せざるを得なかったことは理解でき、また、株式引受人に特に有利な金額による発行価額には該当しない旨の意見を表明しております。
 しかしながら、当社の既存株主にとりましては、本増資による希薄化を免れず、また、本増資の発行価格が直前日の時価4,900 円に対して41%ディスカウントした価格であり、乖離が大きいことから、本増資に対して、差止めを請求される可能性があります。

 上記のように、会社側も差止め請求のリスクを認識しておりますが、実際、もし今回の事案が法廷に持ち込まれた場合にはどのような判断が下されるのか興味深いです。個人的には、もし係争が起きた場合、裁判所が市場株価基準方式だけではなく、一株あたりの純資産等(平成21年3月31日現在96円・・・これから考えると妥当な株価のような気がしますが)、複数の材料を用いてその適正さを裁判所が判断するかどうかをみてみたいような事案であると考えております。

 個人的にはなぜCBではなく、新株なのかというところ等、判断に悩む事例ではありますが、非常に興味深い発表でした。

 WWDCにて新しいiPhone「iPhone 3G S」が発表されましたが、少し思うところを。

 個人的には一番の注目はOSが更新され、iPhoneの欠点であった月額課金モデルの採用が始まること。これによりApp Storeの存在感は増すのは間違いないところで、i-modeのようなビジネスモデルが進展することでしょう。

 一方で気になったのは、「本当にその機能必要?」と思われるほどに多彩な機能が追加されたこと。

 動画撮影及び編集機能は面白いと思いますが、音声認識機能・コンパス機能・P2P機能など本当に使いこなすのかと考えてしまいます。それこそ、従来の携帯電話で使っていない機能が多々あるように。

 そこで思ったのは、iPhoneがコンテンツという意味でもハードウェアという意味でも日本のケータイ市場に近づいていること。(端末メーカが限られていることも似ているかもしれません)

 とすると、世界を相手にできる比較的オープンなPFといわれつつも、日本のケータイ市場よろしく、iPhone市場もガラパゴス化していくのかもしれないなあ等と考えられそうな気がしました。

 元々独自性が強みであるので、それはそれは問題ないのかもしれませんが、そういった視点で今後の進展を見たくなる発表でした。

 この一週間程、ブログの検索ワードにJDC関連が上位を占めていたので、何かプレスリリースがあるかと思い、HPをみたら中々香ばしい事態になってました。

 純資産が1億を切って、信託業法に引っかかっているというような内容の記事は読んでいたので、決算発表がまずかったのかと思いましたが、予想以上の事態でした。

 具体的には、以下の記事。

2009/06/02 代表者の解任・異動に関するお知らせ

 プレスを読むと要は代表取締役が社内の規定を無視した契約を締結したり、兼業禁止に引っかかったりという事態があったため解任したというもの。

 このあたりの事実関係は色々と思うところがありますが(兼業禁止なんて就任時にわかるのでは?ということ等)、一番しびれるのがプレスに書かれた以下の文。

 当社は、平成21年6月1日深夜開催の取締役会において、代表取締役社長の平田充を解任するととも
に、取締役の岡田馨が代表取締役社長に就任いたしましたので、お知らせいたします。

 深夜開催の取締役会と明記する時点で自分たちがもめている所を明らかにしていると思うのですが、なにより映画も公開された「ハゲタカ」を髣髴とさせるダイナミックな展開で、6月の定時株主総会等、目が話せない展開が続きそうです。

 一週間ほど前に、村上春樹の新刊、1Q84を読み終えました。

 あることをきっかけに月が二つある並行世界に迷い込んだ二人の主人公「青豆」と「天吾」にによるカットバック形式の物語。

 物語の展開は村上春樹の長編小説の定番といった感じであり、過去の様々な長編小説を彷彿とさせるエッセンスがちりばめられております。そういった意味では目新しさはなく、むしろ安心して村上春樹の世界に浸かる感覚を覚えます。

 ただ、過去の作品に比べ、社会に対する向き合い方が違う印象を受けました。ひとつの象徴的な例が宗教であり、DVであり、情報社会であったりしますが、こういったテーマに対し一定以上のコミットが感じられ、また、意外に感じさせられました。

 ただ、そういったテーマ性を持たせることは、4月に発売されたモンキービジネスで特集されている村上春樹のインタビューにおいて書かれていた「挑戦」であり、「実験」だったのかと思えました。

 著者自身が発売されるまで書籍の内容を秘密にしていたことを思うと具体的な内容を書くことは憚られますが、結論としては、変化している部分もしていない部分も合わせて非常に読み応えのある作品でした。

 

   

Profile

HN:decchy
大手通信会社でエンジニア・営業経験を積んだ後、IT系ベンチャー企業に転職、 営業・企画・PR等を行うマネージャー業務を担当し、 2008年の東京インタラクティブ・アド・アワードに入賞する等の実績を残す。
現在はプライベートエクイティに転職し、投資業務並びに経営支援、新規事業開発支援業務に従事中。

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