2008年8月アーカイブ

 昨日、六本木ヒルズのTOHOシネマズで映画「デトロイト・メタル・シティ」を見てきました。

 前売り券を持っていたため予約なしで見ようと14時半頃到着したのですが、スクリーンが200席程度のキャパシティだったこともあり、空いていたのは18時55分の回、しかも前方しか席は残っていないという人気でした。

 肝心の内容はというと、原作とは近すぎず遠すぎずの距離感で、原作を基にしたエピソードを活用しつつ(原作では別の話になっていたエピソードの組み合わせもかなりありました。)上手くオリジナルのストーリーに仕上げていました印象を受けました。

 完結していない原作と異なり、104分という限られた時間で、一定のストーリーを完結させる必要がある中で上手く原作のテイストを出せていたのではないかと思います。

 その中でも2つ個人的に好きだったシーンは、大学時代の後輩の佐治君とクラウザーさんの絡みのシーン。原作では、テレビ番組の収録のエピソードで存在していたシーンですが、映像ならではの「気持ち悪さ」が上手くでていて思わず声を出して笑ってしまいました。

 もう一つ好きだったのは、クライマックスのシーン。このシーンは原作にはないシーンですが、(類似シーンが単行本の4巻には存在してますが)原作の世界観を非常に良く映し出していたと思っています。「絶対来るだろう」と思いつつ、実際その通りにきて大笑いするお約束的なところでしたが、文句なしに面白かったです。

 さらに一点注目すべき点は、デスレコード社長を演じた松雪泰子の演技。見事な演技すぎました。松山ケンイチの演技もよかったですが、彼女の演技は特筆モノでした。この役で日本アカデミー賞とかとったらどんなコメントするんだろうと思わずにはいられない、最高の女社長でした。

 「このエピソードも入れてくれ!」と思うところはありましたが(弟のトシ君とクラウザーさんの絡みの一部など)、原作を上手く消化できていた映画となっており、満足できる内容でした。

 ちなみに、この「消化」については劇中の音楽についても同様に感じています。個人的には原作の世界観を上手く楽曲にも反映できていたのではないかと思っておりますが、結局の所、PJチーム全体でうまくDMCの世界観を共有できた成果なのではないかと考えました。

 そう思うと、マンガ・アニメ(これは原作に忠実すぎる印象を受けましたが)・音楽・映画といった各メディアと広告等のリアルプロモーションを上手く連動させた面白い成功例なのかもしれません。

 さすがクラウザーさん、面白いだけではなく、勉強にもなります。

 

 以前紹介した、「日本映画、崩壊」の著者が、同日に公開された日米の映画ヒットメーカーが携わった作品の興行収入とその特徴を比較することで、宮崎アニメの独自性を論じる一冊です。

 映画宣伝手段としての「アドバタイジング」「プロモーション」「パプリッシング」に注目しつつ、どのように宮崎アニメがヒットしたかを読み解いているのですが、 「日本映画、崩壊」でも感じた特徴である数字を元に語る姿勢がストーリーに説得力をましています。

 その中でも、日本映画でありながら「洋画系」の映画館でジブリ作品が上映される理由(ロングランができるから、というのが一番の理由です。)や、都心部よりもローカル部でジブリ作品の興行収入が多い傾向がある(津々浦々まで宣伝戦略が伝わっているともいえるのですが)といった内容は非常に興味深いものでした。

 さらに、最近の「日常生活の中で映画を見にいく」「戦略的過ぎる作品を敬遠する」という傾向についてもなるほどと思わされる内容です。特に後者の戦略性は、近年200館クラスで公開しつつも、数億円の興行収入で終わってしまう作品が多い(*1)ことが気になっていたこともあり色々と思わされるところがありました。

*1
「ザ・マジックアワー」や「デトロイト・メタル・シティ」のように宣伝が突き抜けた作品や「相棒」や「花より男子」のように
テレビシリーズから作り続けてきた作品は例外になると個人的には考えてます。

 映画を見にいく際に少し背景を考えられ、楽しく思える一冊で、普段から映画を見にいく人に特にオススメです。

 

 チーム・バチスタシリーズのスピンオフ小説でライジングサンに向かう途中の飛行機とバスの中で読み終えました。

 今回の舞台はブラックペアン1988と同時期の、舞台は東城大学と帝華大学の医学部体育会系剣道部。そして、今回の主役は二人、ジェネラル・ルージュの凱旋の主人公だった速水晃一とジーン・ワルツに登場した清川吾郎の2名。

 小説の中身は、タイプが全く異なる2人の主将が医学部体育会系剣道部での最大の名誉「医鷲旗」を手にしようとする青春ストーリー。強豪ではあるけれども頂点には届かない立場にいる剣道部の主将である二人がいかにして強くなり、頂上を目指すかという内容が各章ごとに視点を変えるカットバック形式で書かれております。

 また、他のシリーズ同様、バチスタシリーズの登場人物がフンダンに登場し、過去の作品と重なるシーンがもちろん存在しております。速水の同級生である田口や島津も登場しますが、今回のキーパーソンは高階病院長。

 清川吾郎が所属する帝華大学剣道部の伝説的OBであり、速水が所属する東城大学に赴任するという役柄である高階は、いい加減な天才タイプの吾郎並びに、生真面目すぎる秀才タイプの速水をそれぞれの手法でけしかけることで物語を盛り上げていきます。

 本作は過去の作品のような医療ミステリーではなく(多少医学的な内容は含めれておりますが)、肩のこらない娯楽小説に仕上がっております。人物評価の一定部分を過去の作品に頼ってしまっている所や、二人の主人公が非連続的に強くなるエピソードには「ドラゴンボール的」な部分が多く、苦笑してしまうといった所は存在しております。ただ、過去のバチスタシリーズに登場していないキャラクターも個性豊かだったこともあり、前述のマイナス点を除いても(シリーズの過去作品を読んでいる自分にとって前者はマイナスではありませんが)、十分に楽しめる作品でした。

 もっとも、速いペースでスピンオフがですぎて、食傷気味といえばそれも否定できないのですが・・・。

 

 遅ればせながら崖の上のポニョを見にいってきました。場所は先月オープンしたての新宿ピカデリー。内装は非常にきれいで、チャイルドシート等の貸与等のサービスは好印象でしたが、各サービスの導線(コンセッションの位置やシアターに向かうエスカレーターの設計など)がイマイチな印象。六本木ヒルズのような当初から設計されている設備に比べるといたしかたないのかもしれませんが、少し落ち着かない印象を受けました。

 客の入りはというと、平日の14:10の回で8-9割が埋まっているように見えました。話に聞いていたのですが、やはり興行としては順調のようです。

 で、肝心の内容。(以下、ネタバレありです。)

 CMで見ていた通り、作画は非常にすばらしいです。その中でも、特に動きの滑らかさが印象的です。仕事道楽のP172にあるイラストでは、もののけ姫の動画枚数が12万枚強だったのですが、今回は15万枚はいっているのではないかという印象を受けました。(こちらのエントリーをみると、もののけ姫の作画枚数が14万枚で、今回が17万枚のようです。ちなみに平均的な30分の深夜アニメの動画枚数は4000-4200枚程度)

 この点に関しては、これぞ日本のアニメといった所でしょうか。

 一方のストーリーは、人魚姫をモチーフにした物語だったのですが、首をかしげる内容でした。その一番の理由は、ディテールの乏しさです。

 宮崎アニメの魅力は「感情移入させる力」で、その「力」の源泉は「ファンタジーの中にある細部のリアリティ」ではないかと思っているのですが、今回はそのリアリティが乏しかったです。

 例えば、主人公の少年、宗介が周りの人たちにポニョを見せるシーン。一人の老女を除き、「かわいい金魚だねー」で驚いたそぶりを見せておりません。この時点で、個人的には「えっ!?」と思ってしまいました。

 同様の印象はクライマックスにかけても受けさせられます。

 物語の後半では、宗介の母親や母親の勤務地のデイケアセンターが水中に沈みながら普通に生活し、宗介の到着を待つシーンがあるのですが、あまりに唐突な展開にも拘らず、上記の老女以外はとまどうこともなく、その場で佇みます。

 その他にも同じような印象を受けるシーンはいくつも存在していました。

 まとめると、周囲の人たちが「異端」について無条件に受け入れすぎで、その受容性のために、物語全体が平坦になってしまった印象だったということです。

 ストーリー自体にどのような意味を監督がこめたかを完全に推し量ることはできませんが、少なくとも、「大人による無条件の受容」が物語としてのクオリティを下げてしまっていた気がします。

 その他にも物語として違和感を覚える部分はあったのですが、何よりもその違和感が大きかった気がします。

 そして、もう一つ、ここはビジネスとしてどうかと思ったことですが、劇場のグッズ売り場にポニョのぬいぐるみが売ってませんでした。スタジオジブリのモットーとして「映像で回収を図る」というのはわかるのですが、本作に関しては、単純な売上という意味を超え、準備しておくべきだったと思います。

 理由は、子供が観賞の後にぬいぐるみを買ってもらい帰宅することで、子供なりに、ポニョの世界を熟成させられる可能性があるのではないかということです。子供向けに舵をきったのだから、劇場の中を越えて、ポニョの世界を楽しんでもらえるように心がけるべきでは?と考えさせられました。(この点では「ポケモン」による世界観の共有は勉強になります。)

 おそらく興行収入としては、200億円前後の興行収入まで達し、成功と評価されていくのでしょうが、個人的には映像の滑らかさ以外は心に響きませんでした。

 「がんばるタイム」や残業禁止の徹底などユニークな制度を取り入れ、会社を19年連続増益に導いた元トリンプ・インターナショナル・ジャパン代表取締役社長の著者による業務の効率化のノウハウ本です。

 仕事のアウトプットは能力×時間×効率で決まるといった前提の下、どのようにこの掛け算を極大化するかについてかかれております。

 自分自身、仕事を行う際には、「現状のタスク一覧をまとめる」「マイルストーンとスケジュールを設定する」といったことを意識してはいますが、「その日の仕事はその日のうちに行う」「決断はその場で行う」といったことをここまで徹底していると勉強になります。

 誰もが誰もとりいれられる内容ではないと思いますが、本書の内容自体は普遍的な内容だと思いますので、ざっと読んだ上で、自分の業務に取り入れられる部分だけ取り入れてみるのがいいのではないかと思われました。

 

 アニメーション絡みの新書の書評をもう一冊。

 攻殻機動隊等のアニメーション監督である著者による社会論や人生論がまとめられている一冊ですが、ここまでイマイチな新書は久しぶりに読みました。正直に「ひどい」です。

 もっと言うと、編集者のスキルがひどいです。

 そう思わせる一番の理由は、誰に何を伝えたい本なのか全くわからないこと。若者向けのメッセージだったり大人向けへのメッセージだったりとターゲットとする層の軸がぶれている上に、その両者に対し同じような口調で論を説くために違和感を覚えざるを得ません。

 しかも、この傾向が第一章の時点で現れているのが致命的。

 出版時期からいってスカイクロラのターゲット層である若者に対してのメッセージだとは思うのですが、若者に対し「若者達」と語りかけるなど、メッセージとして違和感を覚えます。

 編集者が指摘しなかったのか、著者が納得しなかったのかわかりませんが、いずれにせよ、この状態で出版してしまったことは編集者の「スキル」に問題があると思わざるを得ません。

 個人的には第三章の「勝敗論」は非常によ面白かったのですが、残念ながら第一章の時点で「なんだかなー」と思ってしまっていたので、それすら割り引かれた印象を覚えます。

 当面、幻冬舎の書籍、少なくとも新書を購入することはないでしょう。

 スタジオジブリの代表取締役プロデューサーである著者が影響を受けた人物や過去の作品、スタジオジブリの経営などについて語り下ろした一冊ですが、一気に読んでしまう面白い本でした。

 まず、個人的に面白かったのは、徳間書店の社長だった徳間康快や同社の先輩だった尾形英夫とのエピソード。

 豪放磊落な二人の上司とのエピソードのなかに名言があふれています。普通では間に合わない仕事を丸投げしたうえに「まかせた以上は全部任せる」と言い放つ先輩や、「金なんて紙だからな」と名文句を放つ社長とのエピソードは、スタジオジブリという非常に舵取りが難しい会社をなんとか回していく著者の原体験になったのではと思わされます。(もっとも、普通の人では到底対応できないような怪物だったのでしょうが・・・)

 そしてもう一つ面白かったのは、宮崎駿のもつ「リアリティ」について語っている部分。

 ファンタジー色が強い宮崎アニメが継続的に受け入れられる土台はこのリアリティではないのかと直感的に感じた部分なのですが、P59-P64で書かれている細部からの発想「真剣に見た」記憶を通じたオリジナルの創出といった手法がこの肝になっているように考えさせられました。ブレストを通じた発想方法はもちろんですが、この手法は非常に考えさせられるものです。

 その他、本書全編を通じ、過去の作品の裏話(「もののけ姫」のタイトルや「千と千尋~」の舞台設定等)がちりばめられており、各作品に対する親近感を強めることができ、と同時に、最新作のポニョもみにいかなきゃなと思わされました。

 単純に楽しんで読むことが出来るオススメの一冊です。

 

 高い製造技術とブランド力を持ちながらも経営陣の問題により破綻状態にある老舗製菓会社「興国食品」をターゲットにした買収劇を描いた経済小説。旧経営陣、幹部社員、弁護士、金融機関、総合商社、ブローカー、政治家秘書といったそれぞれの立場の人間が、興国食品の「経営権」とそれにまつわる「カネ」をめぐって駆け引きを繰り広げます。

 モデルとなっているのは、おそらく2003年に民事再生法を適用した「東鳩」です。となると、同様の話題をとりあげていた「ハゲタカ」との比較という話になりますが、本書の方が泥沼状態での人間関係に焦点があてられており、企業間の経済戦争という側面が脇におかれております。

 別の言い方をすると、ハゲタカが「新しい資本主義の盟主による覇権争い」というテーマを取り上げているのに対し、本書は「旧来の資本主義のプレイヤー達による権力闘争」といった印象といった所です。

 その点、経済色が強く自分の仕事と重ね合わせられる部分があるハゲタカの方が趣味に合うため、政治色の強い本書に対しては、少し物足りなさが残りました。

 

Profile

HN:decchy
大手通信会社でエンジニア・営業経験を積んだ後、IT系ベンチャー企業に転職、 営業・企画・PR等を行うマネージャー業務を担当し、 2008年の東京インタラクティブ・アド・アワードに入賞する等の実績を残す。
現在はプライベートエクイティに転職し、投資業務並びに経営支援、新規事業開発支援業務に従事中。

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