書評:カーライル/鈴木貴博

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 全世界で約8兆円もの資金を運用する世界最大級のプライベートエクイティ投資会社であるカーライルグループに関する本です。駆け出しではありますが、自分自身プライベートエクイティに属する業務を行っていることもあるので、後学のためにもと思い購入した一冊です。

 本書は主に3つの内容で構成されております。

  • カーライルのバイアウト部門(*1)におけるケーススタディ
  • マネジメント層や関係者へのインタビューとそれに対するコメント
  • 上記通じたカーライルや現在の世の中に関する著者の考察

*1 比較的大規模(投資金額50億円以上)の企業へのMBOを中核とする部門。「成長」「実質的経営サポート」「継続的成長のためのガバナンス構築」により企業価値を向上させることでリターンを挙げることを狙っている。

 おそらく、プライベートエクイティの業務自身をあまり知らない方はケーススタディが一番面白いのではないかと思います。実際に投資並びに経営支援を実行している経験がある側から見てもワクワクさせられる内容に仕上がっております。個人的には、第1章のコバレントマテリアルや第3章のキトーの例が大変興味深い内容です。

 また、プライベートエクイティとしてのマネジメントの手法も参考になります。その代表がP150に書かれているマネジメント手法です。現場の人々とコミュニケーションしながら、今起きていることが何で、それが組織にどのような影響を及ぼしているかを把握することに努める、というのがその具体的な手法ですが、適切な距離感を保ちつつ、判断のための情報収集を重要視する姿勢は非常に参考になりました。

 ただ、個人的に興味を惹かれたのはマネジメント層のインタビューのコメントです。

 一つ目はP18でカーライルで成功する人間像についてのルイス・ガースナーのコメント

 最も重要な資質は、与えられている経営環境の最高の側面を理解しそれを使い切るチカラです。経営陣の素晴らしさ、ファームが提供できる支援の力、そこに存在するさまざまな人間の力を理解し、それを理解できる能力です。

 もう一つはP228において日本法人の共同責任者である安達さんがコンサルタントとの違いの中で述べていたコメント

 「だからもし経営者ができないとなったら、カーライル人は自分で腕まくりをして経営するぐらいの覚悟を持った人間でなければならない。」

最後には自分で経営してでも価値を高めたいという強い覚悟、気概があった上で、投資先の経営陣に「あなたにやっていただくのだ」と要望する。

 「信じる力」こそがカーライルの強さなのではないかと考えさせられるコメントであると同時に、自分自身が業務に望む態度として持たなければと気を引き締めさせられました。 

 プライベートエクイティという業務固有ではなく、経営全般について考えさせられる面白い一冊でした。業界に興味がない方にもオススメです。

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HN:decchy
大手通信会社でエンジニア・営業経験を積んだ後、IT系ベンチャー企業に転職、 営業・企画・PR等を行うマネージャー業務を担当し、 2008年の東京インタラクティブ・アド・アワードに入賞する等の実績を残す。
現在はプライベートエクイティに転職し、投資業務並びに経営支援、新規事業開発支援業務に従事中。

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