書評:経営変革プロフェッショナル入門/松岡史朗

| | コメント(0) | トラックバック(0)

 日経新聞の広告で気になり購入した一冊。

 10年にわたりTOTO経営スクール(通称「社長塾」)の下でミドル層の変革を促してきた塾長による体験談とノウハウについてまとめられている本です。

 本書の随所でも現れているように、テイストは、ミスミの三枝匡さんが過去に出版されているV字回復の経営や戦略プロフェッショナルと非常に近しいです。

 ただ、クオリティは残念ながら三枝さんの本に比べると数段劣ります。前半、スクールが軌道にのるまでの苦闘は面白い部分もあるのですが、後半は自らと自らが立ち上げた経営スクールのメンバーがいかに従来の職能別組織のメンバーに比して優れていたかの自慢話に終始しているかを並べている印象を受け、三枝さんの本のような感情が奮い立たされるようなことは覚えることはありませんでした。むしろ負の感情が浮かぶ位です。

 その理由は大きく分けて2点。一点目は、FACTとLOGICが重要と繰り返し述べているのに対し、社長塾があげた実績についてはインタビューが中心であり、数値等の客観的なFACTが欠けていること。NDA等の問題により記載できないことは多いと思いますが、内容が主観的で偏っている印象を受けたため、著者の主張を客観的な事実として受け止めにくかったです。(例外はP133-134で書かれている「マンション・リモデル・プロジェクト」の具体例の部分です。話が具体的なだけにこの部分は説得力がありました。)

 もう一点は、大企業的な二元論に立脚して論を展開していること。社長・経営陣並びに社長塾で学んだ側の人間は正しく、その他の人間は劣っているという書き方が多すぎ、独善的な印象を受けます。例えば、P132にある記述。テーマ設定で著者と意見が合わなかった社長塾受講生に対するエピソードですが、以下のように書いてあります。

 

彼はこの後、北海道に出張した。そこで触れた大自然に彼は一時的な感情に走る自分の浅薄さを反省した。彼は私の提示したテーマへの取り組みを決めた。

 

 ドラマティックに書きたいのかもしれないですが、この書き方の時点で旧来から大企業にいる偉い人の発想だなあと思わされ、関係者の方には申し訳ないけど、本当の変革を成し遂げたのについても邪推してしまいました。と同時に、大企業における研修教材としてはいいかもしれないけれど、現実に危機が迫っている企業の経営の変革についてはどうなんだろうと考えてしまいました。

 本書を読むのであれば、三枝さんの本を何度も読み返すべきです。というわけで、書籍のリンクも三枝さんの書籍のみを紹介させていただきます。以前も書いておりますが、こちらは本当にオススメです。

 

      

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 書評:経営変革プロフェッショナル入門/松岡史朗

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://decchy.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/570

コメントする

Profile

HN:decchy
大手通信会社でエンジニア・営業経験を積んだ後、IT系ベンチャー企業に転職、 営業・企画・PR等を行うマネージャー業務を担当し、 2008年の東京インタラクティブ・アド・アワードに入賞する等の実績を残す。
現在はプライベートエクイティに転職し、投資業務並びに経営支援、新規事業開発支援業務に従事中。

音楽・読書を中心としたPrivateのブログはこちら

Search by Google

Google

ブログパーツ