書評:日本映画、崩壊/斉藤守彦 | 日本映画のヒット力/大高宏雄

| | コメント(0) | トラックバック(1)

 2007年秋に出版された日本映画に関する2冊を紹介。2006年に日本映画は約1080億円の興行収入を生み、1985年以来実に21年ぶりに洋画のシェアを超えました。(*1)

 そんな中に出版された上記二冊の本のタイトルは対照的なものであり、それぞれのスタンスの違いもあり比較してみると面白いと思ったわけです。

 *1 2007年は再び洋画が逆転する反面、興行収入10億円以上の作品数に関して言うと日本映画のほうが多い状況。詳細について興味の有る方は社団法人日本映画製作者連盟のHPを参照下さい。)

 結論から言うと、両方の本で書かれている内容の大枠は変わりません。どちらかというと、映画とはどういうものであるべきか、という思いの違いが大きいかと思います。より具体的にいうと、斉藤さんの方が、「職人性・芸術性」といったものを重視しており、大高さんの方が「エンタテインメントビジネス」の視点を重視しているかと思います。

 個人的には、芸術性といったものより、面白くて共感できる映画がいい映画だと思っていることもあり、後者の「日本映画のヒット力」の方が共感できる部分は大きかったですが、映画業界全体の統計やその背景を満遍なく知りたいというのであれば、前者の「日本映画、崩壊」の方がいいのかと思います。

 また、読み比べた中で、個人的に一番興味深かったのは、「日本映画のヒット力」の第四章の「東宝好調の原因は映画調整部にあり」の内容。

 今の東宝の強さの秘訣が、実は30年前の自社の制作能力の弱さがきっかけとなっているということが書かれているのですが、テレビ局との連携といったメディアミックス戦略にばかり目を向けてしまいがちな人間にとっては、業界をしっている人ならではの視点に感嘆させられました。

 その他、今回読み比べてよかった点は、知識を補完しあうことができるという点。

 例えば、「日本映画、崩壊」の方で書かれている「スクリーン数に対し、上映作品数が多くなりすぎている」「一部の大ヒット作品にスクリーンが集中してしまっている」という視点をしっておくことで、「日本映画のヒット力」でエヴァンゲリオンの興行における映画館あたりの興行収入の大きさの意味が深く理解できました。

 同じテーマでこれほど好対照なタイトルはそうはないかもしれませんが、今後の業界理解にも使えそうなノウハウだと強く感じさせられました。

     

トラックバック(1)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 書評:日本映画、崩壊/斉藤守彦 | 日本映画のヒット力/大高宏雄

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://decchy.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/541

 以前紹介した、「日本映画、崩壊」の著者が、同日に公開された日米の映画ヒットメー... 続きを読む

コメントする

Profile

HN:decchy
大手通信会社でエンジニア・営業経験を積んだ後、IT系ベンチャー企業に転職、 営業・企画・PR等を行うマネージャー業務を担当し、 2008年の東京インタラクティブ・アド・アワードに入賞する等の実績を残す。
現在はプライベートエクイティに転職し、投資業務並びに経営支援、新規事業開発支援業務に従事中。

音楽・読書を中心としたPrivateのブログはこちら

Search by Google

Google

ブログパーツ