書評:ウルトラ・ダラー/手嶋龍一
2008年に読み終わった本、第一弾はウルトラ・ダラー。
NHKワシントン特派員であった著者が書いたインテリジェンス小説。詳細なストーリーは、2002年にアイルランドダブリンで発見された精巧な偽100ドル紙幣「ウルトラダラー」をめぐる謎について、英国BBCの職員であり情報部員であるスティーブンが、日本、米国の情報部員・職員と連携し解き明かしていくというもの。
情報収集のプロフェッショナルである佐藤優氏が認めるだけあり、情報活動にかかわる部分の記述は非常に精緻。また、偽ドルがただの紙幣偽造ではなく核兵器の資金源として用いられるという内容は、2002年以降の実際の日本外交を予言していたのではと出版当時の2006年から言われており、一気に読みすすめたくなる内容。
その反面、物語としては雑な部分が存在することも事実。偽札検知に関するエピソードが途中から尻つぼみになってしまったり、巡航ミサイルを押収してからの結末があわただしい上、中途半端なハードボイルド小説のような結末となっており、読み手として一番気になる巡航ミサイルの中身の行方について触れられていないのは残念な所。
特に、結末に関しては、情報戦を散々繰り広げてきたのにも関わらず、女性を救い出すための銃撃戦を山の中で行うのは安易に思えた。そういった点で、現実の事件についてリアルにかかれている「国家の罠」には及ばないと感じてしまった。
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