書評:インテリジェンス人間論/佐藤優

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 2007年12月に発行された佐藤優氏の新刊。内容としては、新潮45に連載された内容を中心とした人物論。

 書き下ろしの「鈴木宗男論」から、外務官僚時代に交流のあった橋本、小渕、森の元総理大臣、そしてラスプーチン、スパイ・ゾルゲ、さらにはイエス=キリストまで、豊富な経験や知識に基づいた分析による人物論を展開している。(前半では自身が関わった政治家について、また、後半では過去の人物について論評されている)

 前半部分の鈴木宗男氏から森元総理に関しての経験談並びに人物評は、文句なしに面白い。(一部は、別の書籍で呼んだことがあるエピソードが出てくるのは仕方のないところではあるけれども)小渕総理のもつインテリジェンスの素養や、自己保身や嫉妬を超え国益の成就を目指した森総理のエピソードなどは、あまり表に出てくる話ではなく、非常に興味深かった。

 一方、後半のイエス=キリスト、ティリッヒ神学とアドルノといったエピソードは、自分にとって馴染みがない議題である上、自分としては専門的過ぎて正直、理解するのが難しく、興味がわかなかった。

 では、本書を読むにおいて、一番面白いのは、他の著作と同じような北方領土関連の出来事なのかというと、必ずしもそうではない。

 むしろ、本書の価値は第十三話の「有末精三のサンドイッチ」にあると思えた。

 終戦直後、米軍との対応窓口になった中将であった有末精三は、天皇制の維持といった最終的な国体護持のためには「米軍に軍票を使わせないこと」が不可欠であると考えた。その上で、有末は、アメリカが脅威に感じる条件である「日本国内におけるゲリラ戦」「ソ連との接近」といった2つのシナリオをイメージさせることにより、米軍との交渉を成立させた。(具体的な種明かしは本書P175-P177にて書かれている。)

 このような一般的に走られていないけれども重要な任務を担った人間のインテリジェンスというのは読んでいて非常に勉強にもなるし、単純に読み物としても面白い。

 自身が巻き込まれた「国策捜査」の前後に関する経験を活字にし伝えていくという点で、既に申し分のない評判を得ている著者だからこそ、今後は自身の経験だけでなく、一般的に知られていない人物やエピソードを拾い出して、独自の視点を加えた上で、伝えていって欲しいと強く感じさせられた。

 

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HN:decchy
大手通信会社でエンジニア・営業経験を積んだ後、IT系ベンチャー企業に転職、 営業・企画・PR等を行うマネージャー業務を担当し、 2008年の東京インタラクティブ・アド・アワードに入賞する等の実績を残す。
現在はプライベートエクイティに転職し、投資業務並びに経営支援、新規事業開発支援業務に従事中。

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